セキュリティ特集


 ワイヤレスでインターネットに接続できる無線LANは、家中にケーブルを張り巡らせる必要がない、ノートPCの機動性が失われない、などの理由から非常に人気の高いシステムです。また、最近では、カフェや空港など主要な場所に「ホットスポット」と呼ばれる無線LANのアクセスポイントが設置され始めており、これを使うことで、外出先からでもワイヤレスにインターネットに接続できます。このように、無線LANのシステム自体は非常に便利なものなのですが、実はその裏で、無線ならではのセキュリティ問題も存在すると言うことを知っておかなければなりません。

 無線LANは、ケーブルを通じて信号をやり取りする代わりに、信号を電波に変換してやり取りすると言う方法を採用しています。しかし、無線信号と言うものは、第三者からも用意に傍受できてしまうのが難点。例えて言うなら、ラジオやテレビのようなもので、その電波を傍受できる機器さえあれば、誰でも電波を受信できてしまうのです。もちろん、電波を傍受されたからと言って、すぐにデータを解析されるわけではありませんが、有線のネットワークに比べると、ややセキュリティ面での心配が残るのも事実なのです。

 特に、最近心配されているのが、街角のあちこちに設置されているホットスポットを通じた無線LAN接続です。家の中、あるいは会社の中で行われる無線LANであれば、アクセス権限が制限されているので内部のネットワークにアクセスするのは難しくなりますが、街角にあるホットスポットでは、不特定多数のユーザーが同一のネットワークにアクセスできるため、セキュリティに関しての不安はいっそう高くなるのです。せっかく便利なホットスポットにも、実はこうした落とし穴が存在するのです。

 こうした状況に対して、防御する手段としては、まずCASE1で紹介した「セキュリティソフト」を導入するというのが基本といえるでしょう。多くのセキュリティソフトには、Cookie(クッキー)などでやり取りされる個人情報の漏洩を防止したり、外部からの不正アクセスを遮断する機能が備わっているので、これだけでもセキュリティの向上には役立ちます。ただし、これだけでは、無線LANなどの環境で問題となる、無線信号の傍受および不正データ解析を完全に防ぐことはできません。こうした情報漏洩を防ぐには、無線でやり取りされる信号自体をより複雑に暗号化して、解析できないようにするのが最良の方法なのです。企業間の重要なデータのやり取りにおいては、「VPN」(Virtual Private Network)などの複雑な暗号化技術が注目を集めており、インターネットを通じてやり取りされる情報を外部から遮断するような仕組みが構築されつつあります。

セキュリティチップThinkPadT30
ThinkPadシリーズに搭載される「セキュリティー・チップ」(左)と
セキュリティー・チップを搭載した「ThinkPad T30」(右)(日本IBM)
 もちろん、個人で使う用途では、費用が高額なVPNを導入するわけにはいきません。しかし最低でも、PCやネットワークにアクセスするためのIDやパスワードくらいは暗号化しておきたいところ。万が一、PCを盗まれてしまっても、PCの中に入れなければ、データの漏洩を防げるのです。こうした要望に答えるようにして作られたのが、IBMのノートPC「ThinkPad」シリーズに搭載されている、「セキュリティー・チップ」です。これは、セキュリティに関する機能をハードディスクやメモリーから切り離しハードウェアとして独立させることで、クライアントPCの環境をより安全にし、より強固な認証、暗号処理、データ保護などの機能を提供するものです。これなら、外部へのパスワード漏洩も防げますし、入力するパスワード自体は変わらないので、パスワードが長すぎて覚えられないということもありません。このように、PCのハードウェアの一部としてセキュリティ機能が組み込まれているのは珍しいですが、今後、このようなシステムが世界的なスタンダードになっていくのは、ほぼ間違いありません。

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